保険診療も適用可能な禁煙治療
喫煙されている方を対象に禁煙治療を行う外来のことを禁煙外来と言います。なお同治療については保険診療が適用されます。その対象となるためには、以下の項目の基準を全て満たす必要があります。判定については初診の際に医師が行います。その結果、保険診療にならなかったとしても全額自己負担とはなりますが、禁煙治療そのものは受けられます。
- 以下の条件すべてが該当すれば、保険診療として禁煙治療が受診できます
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- ニコチン依存症に関するスクリーニングテスト(TDS)でニコチン依存症と診断された方(10点中5点以上)
- 35歳以上の方で、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が、200を超えている方
- 速やかに禁煙をしたいと希望されている方
- 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療の説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意された方
薬物と同様の中毒症状
禁煙は本人の意志次第と考えている方もいるかもしれませんが、タバコに含まれているニコチンという成分が、脳内にあるニコチン受容体に結合するようになるとドーパミンと呼ばれる快感を生み出す物質が放出されるようになります。そして、この成功体験を得たいと度々タバコに手を出すようになります。そのうちタバコを吸えない状態が続き、体内でニコチンが切れると、イライラ、落ち着かないなどの禁断症状が出るようになってついついタバコを吸うという行為が続くようになります。これをニコチン依存症と言います。
ちなみにこのニコチン依存症というのは、コカインやヘロインなどの薬物依存と同じくらい依存性が高いと言われています。つまり禁煙をするというのは決して意志だけで解決できるものではなく、薬物依存と同様に医師によるサポートが必要とも言われているのです。
禁煙補助薬による治療
診察の結果、禁煙治療が必要とされる患者さまにつきましては禁煙補助薬による治療を開始します。禁煙補助薬の種類としては、貼付薬のニコチンパッチと内服薬のバレニクリンがあります。現在、バレクリニンに関しては出荷停止の影響が続いています。そのため、当院ではニコチンパッチのみによる禁煙治療となります。
ニコチンパッチはニコチンの成分を含む貼付薬です。使用時は同パッチを体に貼り付けます。この場合、起床後から夜寝る前まで付けたままにしていきます。貼り付けている間は皮膚からニコチンを吸収するのでニコチン切れによる禁断症状が出ることはありません。この状態を6週間続けた後、ニコチンの含有量が半分になったパッチを2週間使用していきます。計8週間パッチを使用し、9週間目からは何も貼らない状態にしていきます。その後、何も問題がなければ禁煙に成功したということになります。
なおニコチンパッチの注意点として、貼付位置をいつも同じ部位にすると皮膚がかぶれるおそれがあります。したがって、毎日貼る位置は変えるようにしてください。
通院時の流れ
禁煙治療の基本は12週間のスケジュールとされ、計5回の通院が必要となります。5回の通院時の流れは次の通りです。
- 1. 禁煙治療の初診
- 保険診療適応の有無をみるほか、呼気中の一酸化炭素の濃度の測定、禁煙開始日の設定、禁煙治療薬(ニコチンパッチ)の処方などが行われます。
- 2. 初めての再診(2回目の通院)
- 初診から2週間後に初めての再診(2回目)となります。医師から禁煙してからの身体の状態を聞かれるほか、呼気中の一酸化炭素の測定なども行います。
- 3. 通院3回目、4回目の受診
- 初診から4週間後に3回目、8週間後に4回目の通院となります。呼気中の一酸化炭素測定も行います。また離脱症状の確認、問題点があればその把握に努め、医師がアドバイスするなどします。
- 4. 最後の受診
- 最初の診療から12週間後が5回目の受診となります。禁煙に成功していると医師が判断すれば治療は終了となります。保険診療で受診されている患者さまは、適用されるのは3ヵ月の治療期間と5回の通院までとなります。それ以降も治療が必要となれば、保険適用外となり全額自己負担となります。